「モテたい」ってどういう意味で言ってたの!?

2024/6/8 投稿作品。
隼人の「モテたい」から飛躍して、初めてふたりが一線を越える話。
よかったら一言くれると嬉しいです↓


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2026-06-08 22:45:34
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「そういやハヤト。最近、モテたいって言わなくなったよな」
「えっ!?」
 High×Jokerの仕事もひと段落し、家の方向が違う旬や夏来と別れ、家路につく道すがら。春名のその何気ない一言に、表情の変わりやすい隼人はわかりやすく戸惑った表情を見せた。
「少し前は毎日のようにモテたいって言ってたのにさ。今日の収録でも司会者に話振られて、固まってたじゃん」
「あ〜……。そうだな……」
「あの時オレのフォローがなかったら、確実に事故ってたっすよねーハヤトっち」
「ごめんな……! あの時シキとハルナがフォロー入れなかったら、上手くいかなかったよ」
 今日の仕事は、新曲のプロモーションのために出演する音楽バラエティ番組の収録だった。新曲の演奏もばっちり上手くいったが、トークパートの収録が印象的だ。学校の話やアイドル活動の話、春名の最近のイチオシドーナツの話。
 そして「隼人がモテたがっている」という情報から広がったトークもあった。司会者にもからかうように「モテたがってるんだって?」と話を振られた隼人は、なぜか頭が真っ白になってしまった。アイドルとしていろんな仕事をすることにも慣れてきて、どんなトークも卒なくこなせるようになっているという自負はあったが、こんなに頭が真っ白になったのは、デビュー時以来だった。
「あそこまで固まったってことは……ハヤト、もしかして、ついに来ちゃったか、モテ期!?」
「いや、そんなんじゃないから!」
 間髪入れず、隼人は慌ててブンブンと首を振りながら訂正をする。隼人からしたら万年モテ期の春名からそう言われるのはなんだかこそばゆいが、わかりやすいモテ期は残念ながらまだ来てはいない――はずなのだ。
「え、えっと……心境の変化って、やつかな? ずっとモテたいばっかりだと、さすがにファンにも飽きられるかなって……」
「あ、もしかしてホーコーテンカンってやつっすよね、ハヤトっち!」
「そ、そうだよシキ! 新しいことも必要かなって!」
 誤魔化そうにそうは返してみるものの、咄嗟に思いついた割には隼人の中ではあまりピンと来てない。
「確かにハヤトのモテたがりって、俺たちはともかくファンにもすっかりお馴染みだしな」
「そうっすよねー。……あ! オレこっちの方向なんで! ハヤトっちも同じっすよね?」
「え!? ……あ、うん!」
 そんな、しろどもどろになりそうな隼人の腕を、四季はがっしと鷲掴みにし、ぐいと引っ張る。やや忙しない動きと腕を引っ張る強さから、まるで、ふたりで何かを話したい、と言わんばかりだった。
「また明日っす、ハルナっち! バイバイシュー☆」
「また明日な、ハルナー!」
「おー、2人ともまたなー」
 にこやかに手を振り見送ってくれる春名に別れを告げながら、四季は隼人をぐいぐいと引っ張りながら、分かれ道の先へと進んでいく。やがて春名の姿が視界から見えなくなるまで見送ってから、四季は引っ張るように掴んでいた隼人の腕を離し、なにかまずかった、と言いたげな顔で話し始めた。
「……今、明らかに動揺してたっすよ、ハヤトっち!」
「あ、ありがとう、シキ……!」
「みんなにはオレらが付き合ってることは隠しておこう、って言ったのはハヤトっちじゃないっすか」
「そ、そうだけどさー! なんか、色々考えてもうまく言葉が出てこなくて……!」
 四季と隼人の「お付き合い」は、誰にも知られず続いていた。憧れだとか、眩しいだとか、大好きで大好きでたまらない。そんな気持ち混ざり合ったものがいわゆる恋慕のようなものに近しいものだとお互いわかり、 やがて彼らは恋仲となった。2人がそういう関係である――ということはまだ、メンバーにも知られていない。いつかバレてしまうだろうし、いっそメンバーには話してしまおうかと考えたこともあるが、皆に迷惑をかけてしまうかも、私情と仕事が混同してしまうかもしれない、という理由で一旦保留となった。先輩後輩同士やユニットメンバーともまた違う、ふたりの好きが重なった同士の関係性はゆっくりゆったりと、続いていた。
「色々考えていた、って?」
「……やっぱり、まだ言ったほうがいいのかなぁ、モテたいって」
 隼人が今日、司会者からの「モテたがりアイドル」という話題を振られうまく応えられなかったのは、四季との関係が収録中に頭に過ったことが1番大きかった。言葉に詰まり、四季の言うところの「ギリギリ事故った」状態を引き起こした。
「ホーコーテンカン、マジのガチでしちゃうんすか?」
「そうした方がいいのかなぁ……。シキと付き合っていることを隠しながらモテたいっていうのも……なんかうまいことしっくりこなくて」
「でも、世の中の芸能人って、だいたいそういうもんなんじゃないっすか? オレはそこまで気にしなくてもいいと思うっす」
「そ、そういうもんなのかなあ……」
 芸能界というパブリックイメージが重視される世界に身を置いている以上、真実を隠すことだって大事だ。共演している俳優に恋人がいる、なんてオフレコな噂がそこかしこで聞こえてくるような世界。でも、嘘をつくことが明らかに苦手で罪悪感を覚えてしまう、そんなまっすぐな性格の隼人にとってはとても難しいことに見える。
「オレとお付き合いしてからも、前みたいにモテたいーって思ったこと、あるんすか?」
 今まで考えたことのないようなことを聞かれ、四季と恋人関係になった頃まで思い返してみる。付き合い始めの頃はまだモテたいことへの興味は強かったが、四季と付き合い始めて時間が経っていくと、そこまで思わなかった気もする。自分が誰か1人の大切な人になっても、「モテたい」という気持ちはそもそも成立するのか――。隼人は一度考えたこともあったけど結局眠れなかった。今、結論を出すには果てしなくて大きな問題のようにも思えてくる。
「最初はモテたいって気持ちはあったけど……今は前よりはモテたいって思わなくなったかな? シキがいるし」
「そもそもの話、ハヤトっちにとってモテって何なんすか……? メガモテのモデルとか、周りにいるんすか?」
「えっ……?!」
 さらに核心を突くような四季の問いかけに、隼人は言葉に詰まってしまう。モテのモデル、手本……。該当するような人物を頭に浮かべてみる。毎日のように女子宛からと思われるプレゼントをもらって帰ってくる兄。はたまた、学校で女子とすれ違う度に黄色い悲鳴が上がるような、春名や夏来か。
「うーん……兄貴とか、ハルナやナツキ、みたいな……?」
「ああー……。ハイパー予想内だったっすね……」
「自分から聞いておいて……」
 そんな会話をしながら、四季はそのまま隼人の家に着いてきた。気づいたら隼人の家に来て、兄がいればお邪魔するっす、と軽くあいさつし、そのまま隼人の家で過ごす。これも四季と隼人の新しい関係の「日常」にもなっていた。
 家には誰もいなかった。今日は兄の帰りも遅い日なのだろうか、とか、さも自宅のように入るなよ、なんていつもは茶化していたが、今の隼人はそこまで考えが回っていなかった。
 
 隼人の部屋に入った四季は、持参していた辛そうなスナック菓子をつまみながら、帰宅時の会話の続きを切り出した。もうすっかり、自宅のように寛いでいるが、隼人にとってはもう見慣れた光景だ。
「さっきの続きなんすけど、ハヤトっちは今までそこんとこ考えてモテたいって言ってたんすか!?」
「そこんとこ、って?」
「いろんな子と、イチャイチャしたいとか、抱きたい、とか」
「だっ、抱き!? そんなやらしい意味ないって! 毎日プレゼントもらったり、話しかけられたり!?……あんな感じに、純粋にモテたいだけ!」
 隼人なりに、兄や春名、夏来の姿を思い出しながら「モテたい」の意味について絞り出してみる。
「ハヤトっちの毎日のモテたいって、そんなマジメガ純粋なやつなんすか!?」
「ま、まぁ……。そう、なるかな……?」
 そう話す隼人の目は、とても純粋で嘘偽りないものだ。そんな隼人を見た四季はどこかあきれた様子になっている。四季の言葉遣いを借りるのなら「マジメガあり得ない」と言いたいかのような表情だ。
「それで、あれだけモテたいって、よく言えてたモンっすね……」
「そ、れは……! そこまではあんまり考えてなかった、っていうか……!」
「ハヤトっちって、前も言ったことあるけどマジメガウブいっすよねー」
 四季はそう言い終わるか終わらないうちに、とっさに隼人の唇に、自分の唇を合わせた。四季が急にキスしてくるのはよくあることだが、どうしても心の準備ができないまま始まってしまう。しっとりした感覚と熱や、口の隙間から漏れる息遣いは、いつ体験してもドキドキする。付き合い始めてからの四季とのキスは何度もしていることなのに、新鮮でどこかいけないようなことをしているようだ。自分の年齢ではまだまだ大人の領域だ。ちゅ、ちゅっと音を響かせてから四季はすぐに唇を離す。
「こんな風に、キスするだけで顔ハイパー真っ赤になっちゃうし」
 そこは否定ができない。まだまだ慣れていないしこれからも慣れる気配がないからだ。じっと目を見て少しだけ真剣な表情をした四季は、言葉を続ける。
「オレ……そろそろ、ハヤトっちとキス以上のもっとえっちなこともしたいなって、思うんすけど」
「え? そ、それって?」
「…………セックスとか」
「……セッ!?」
 四季は少し頬を染め、わざわざ言わせないでほしい、と言わんばかりのやや不服そうな表情と小声で、隼人の方をみてつぶやく。その表情がなんとも言えないほど扇情的だったことや、四季からそんな言葉が出たことも初めてで、隼人の顔はさらに真っ赤になってしまう。キスはするけれど、そこまで性的なことに踏み込んだ話には今まで発展することもなかったからだ。
「そうっす。オレ、ハヤトっちとお付き合いしているからには、もっと親密で、特別な関係になりたいっす」
 こんなに顔を赤くしている俺を見て、特別になりたい、と目の前の後輩であり恋人は真剣に訴えている。いろいろ不安はあれど、やっぱり応えたいと思ってしまうのが、隼人の性格だ。付き合う、ということがわからないけどいつかはなんて考えていたけれど、そろそろその時が来たのかもしれない。
「それは俺も同じだよ! シキのことが大好きだから、もっともっと特別に、なりたい」
「ハヤトっち……知りたくないっすか?……キスの先の、大人っぽいコト」
 四季が、自分の部屋で、怪しく誘うように微笑する。後輩でも、バンドのボーカルでも、アイドルでもなく、扇情的に自分を誘惑する「恋人」の姿。そんな四季の怪しい目線から、隼人は目が離せなかった。
 モテたいの意味だとか、モテたいの果てにあるものだとか、そんなことよりも。
 ――シキと、特別になってみたい。
「……し、知りたい」
 
「じゃあ、今度――抱かせて。ハヤトっち」
 艶やかに濡れた唇を動かして、いやらしい目で自分を見ながら誘惑する四季を見て、隼人は無言でこく、と頷くことしか出来なかった。

[newpage]

 ――今度、抱かせて。ハヤトっち。
 
 あの音楽番組の収録の日の帰りに四季からそう言われてから、数日が経った。結局その日はキスをした後すぐに兄が帰ってきたのでそのまま解散してしまったが、四季のあの怪しくてやらしい微笑みは今でも鮮明に思い出せる。
 そもそもこういうことって、自分が受け入れる側でいいのか、そう決めたのは四季が都合よく自分を使いたかったのか……なんてことも考えたが、自分が四季を組み敷いているところはどうしても想像が出来なかったし、これでいいのかもしれない――そう、受け入れられていることに、隼人は少し意外に思えた。もっと無理、だとか、俺が下になるのかとか、思ってもいいはずなのに。
 隼人は性的なことに関してそれなりに知識はあった。保健体育の授業での知識ももちろんのこと、思春期真っ只中の少年ならば性的なことは嫌でも興味を持ってしまうものだ。他の同年代の性事情はよくわからないにしろ、自慰だって人並みにはしているつもりだ。まさか「抱かれる」側になる日が来るとは、この前まで思いもしなかったが。
 男同士のセックスのやり方についてもひと通りネットで検索したが、女子相手でのやり方すらそこまで詳しくない隼人にとって、もはや想像の範疇を超えたような出来事にも調べているうちに見えてきて、眩暈がしそうだった。そんな中で調べている中でわかりやすそうだと思って開いたウェブページに書いてあった「挿入のための下準備」とやらを昨日の入浴時に試みようとしたが、羞恥心と背徳感が勝ってしまい結局秘部に触れることすら出来なかった。
 自分は一体、どうなってしまうんだ。未体験で刺激的なことをする不安も大きいが、四季になら自分の体のすべてを委ね、好きに暴かれることはそこまで嫌なことではないと思えていた。

 
 Ⅹデーは、それから間もなく訪れた。
 その日は学校も休みで、四季と隼人だけのボーカルレッスンが朝から夕方まで。偶然にも四季の家族は皆翌日まで家を空けており、自宅には四季しかいない――スケジュールがわかった際に、四季からそのような内容がLINKで送られてきたのだった。
 レッスンを終えた四季と隼人は、日の暮れた住宅街をふたり、並んで歩いていた。日が長くなっているとはいえ、そろそろ夜にも差し掛かる頃だ。
「……ハヤトっち、そんなに緊張しなくてもいいのに。今更お泊まりなんて、何回もやってるじゃないっすか」
「それは、そうだけど……」
(これとそれとは、意味合いが違うんだって……!)
 レッスン中では普通に会話していたが、帰り道の隼人の様子は明らかにいつもと違っていた。どうしても、これから四季とすることについて頭がいっぱいになって、つい黙ってしまう。自分は今夜、一体どうなってしまうんだろうか。
「そ、そーいや! オレん家に先輩が来るのって、ハヤトっちが初めてなんすよね」
 そんな緊張、委縮したような様子は、隣の四季にも伝わっているようで。なんとか、会話の話題をつくり緊張を和らげようとしていた。
「そうなの!? 確かに、シキの家に行くの初めてだ」
「オレんちって、ジュンっちの家ほど広くないからあんまり5人だと集まれないし」
「ジュンの家が大きすぎるんだって」
「そうっすよねー。ジュンっちの家がまずハイパー広いし、ピアノもメガ風呂もあるしで、結局便利なんすよねー」
「俺の家も5人で集まると結構ギリギリだったもんなー、ジュンの家は本当に大きい……」
 先程までの緊張はどこへやら。そうこう話していたら四季の自宅の前まで着いていた。ドアを開けて玄関に入ると、四季の案内で隼人は自室まで招かれる。間取りはそこまで小さくない、むしろ隼人の部屋と同じくらいの広さのようだが、お気に入りのブランドの服やグッズが部屋一面を埋め尽くすほどに多く並べられているせいか、やや狭く感じた。部屋全体の雰囲気は彼の好きなピンクや黒を中心としてまとめられているが、ベッドなどの寝具はシンプルなもので揃えていたことは少し意外にも見えた。
「なんか、シキの部屋……イメージ通りだな」
「そうっすか? なんか照れるっす」
「シキがいつも着ている服みたいだなって」
「そこまでわかりやすいっすかね?」
「めっちゃわかりやすいよ! ジュンやナツキが見たらびっくりしそう」
「確かに! オレちょっと出てくるんでゆっくりしてくださいっす!」
 四季は部屋の定位置にカバンを置いた後、一旦自室から出る。
 隼人も持ってきた荷物を置いて、座ってローテーブルに腕を置き、四季の部屋を見渡す。派手な服や装飾で飾られた部屋の中で異彩をふと、ベッドのサイドボードのルームランプの傍に何気なく置かれているあるものに気づく。ぱっと見ペットボトルにも見えるが、よく見ると小さめでキャップが大きめで、まったく違うものだった。でも隼人は、「それ」の使い方について、何となく察することができていた。気になってしまい、四季が普段使っているであろうベッドにそっとよじ登り、そのボトルを手に取ってみる。中身は減ってはいないが、封が開けられた形跡はある。四季が一度、開けたのだろう。
(これって……えっちする時に使うもの、だよな?)
 以前情報を集めていた時に、男性同士ではローションを使うことが必要不可欠だと書いてあった。ボトルの中身の液体は透明だが、傾けると中身がもったりと重力に沿って動き。、粘度のある液体だということがわかる。その傍らにある濃いピンク色をした紙箱の中身も、なんとなく予想がついた。四季の好きなクマ型にも見えるキャラクターのイラストがあしらわれているが、その箱の中に入っているものはファンシーどころじゃない生々しいものなのだろう。
 四季が、自分とそういうことをするために準備をしている。自分は何の準備もできないままに今日を迎えたというのに。四季なりに準備をしている――やはり自分は四季のことを抱いて下にはできないな、なんて考えてしまう。
「ハヤトっち? それ気になるっすか?」
「わーーーーっ!? ご、ごご、ごめ……」
 背後からの四季の声に、思わず叫んでしまう。勝手にベッドに上って私物触っちゃってごめん、なんて言葉も吹っ飛んでしまう。
「ハヤトっちってば驚きすぎっすよー。それ、この前買ったんすよ」
「え、俺たちの歳でも買えるもんなの?」
「コンビニとかでも売ってるっす! オレは通販で買ったけど」
 お気に入りのブランドや服や雑貨を買ったように、話してのける四季は、自分の先を言っているなとますます実感した。四季の好きなブランドからこういうグッズが出ていることは、あまり知りたくなかったが。

 * * *
 
 夕飯をリビングで食べてからお互いに入浴なり歯磨きなりを終え、あっという間にあとは寝るだけ――という時間となった。
 四季と隼人は、寝具が取り払われたベッドマットの上に向かい合って正座している。どこかシュールな光景だ。
「あの……やっぱり電気って、消したほうがいいんすかね……?」
 そう四季に聞かれるが、隼人だって経験したことない為どうしたらいいかがわからないのも本音だ。でも、この先自分の恥ずかしいところまで見られてしまうのなら、照明を暗くした方が良いのかもしれない。
「俺もわかんないけど、暗くする……?」
「ラジャーっす!」
 四季は軽い返事をして立ち上がり、部屋の照明を消す。途端に部屋が真っ暗になる。
「うわ、暗っ! これだと見えない……」
「それならちょっと明るくするっすね」
 四季は部屋の照明を常夜灯だけにし、おまけにベッドのサイドボードに置いてあるルームランプをオンにする。暗闇がちょっとだけ和らぎ、クマの形をした灯りがやさしく燈る。これだと適度に暗くなって、手元や足元は見える。四季はサイドボードの近く、普段枕を置いている場所にまた正座し、隼人の方に向き直る。
「……ハヤトっちは、どこまで、したことあるんすか」
「どこまで、って……?」
「さすがにオナニーは、したことあるっすよね?」
「オッ!?」
 四季の口からそれまで聞くことがなかった言葉が出てきたことに、隼人は目を丸くして驚いた。High×Jokerのメンバーの間でも、そこまでの下世話で低俗な会話はさすがにすることは一切なかった。この手の話題があまり得意ではなさそうなメンバーがいることも大きな要因のひとつだった。何より、そんな会話より音楽だったりドーナツだったり学校の話題で十分盛り上がれるから、そういう下世話な話題なんて必要のないことだったのかもしれない。
「ま、まあ、あるよ……俺だって、ムラっとすることはあるし……」
 メンバーとはそれまでしたことのない会話をしていることに、隼人は少しだけ恥ずかしくなってしまう。そんな隼人とは
「そこまでウブじゃなくて、ちょっと安心したっす」
「安心することかよ……っ」
 反論しようとした隼人の口は、体を寄せてきた四季の唇で塞がれた。突然キスされるのはやっぱり慣れないが、嫌じゃないな、なんて頭の中で考える。いつものように熱と感触、吐息を確かめ合うキスだ――そう思っていた刹那、四季の舌が隼人の唇の間をかき分けて口内に入ってくる。ぬるっとして生暖かく熱をもった生き物が、歯列をこじ開けて自分の中に入ってくるようだ。
「む、わっ!」
「わっ!?」
 隼人はその奇妙な感覚に驚いて唇を離してしまった。これには四季も予想外だったようで、近距離で放たれた四季の大声でまた驚いてしまった。
「ちょっと、何で口離すんすか!」
「だって!! こんなキス、初めてで……」
「え、ハヤトっち良くなかったっすか……?」
「良いとか悪いとかじゃなくて……びっくりして」
 少しだけうつむいた隼人のしょんぼりとした表情で、隼人はこっそりと絞り出すように話した。少しだけ目が潤んでいるようにも見える。ここで気持ち悪い、と話してしまうと四季のことを否定してしまうことにもなりかねない。隼人なりの優しさゆえの言葉選びだった。
「そうっすね。メガウブどころか、ギガテラウブいっすもんね、ハヤトっちは」
 そういう四季は経験があるのか――気にはなったが、聞き返すことは出来なかった。どうか自分と同じように、その手の経験がないままでいることを信じたい。
「ハヤトっち、今日は初めてのことばっかで今はハイパー怖いかもだけど、大丈夫っすよ」
 近い距離でにこりと笑った四季の笑顔。そのいつも見せてくれる明るくポジティブな笑顔は、根拠はなくてもなんとか大丈夫だと安心する気持ちにさせてくれる。
「手、握ってると怖くないと思うっす」
「……うん」
 四季にそう言われ、隼人は四季の右手に自分の左手を恋人繋ぎをするように指を絡めた。四季の左手が隼人の後頭部に置かれ、そのまま体をぐいっと寄せられ、唇がまた触れ合う。ちゅっと、音を響かせた後に、また隼人の口内に四季の舌が入ってくる。今度は初めから舌を入れるキスをするとわかっていたし、左手から伝わる熱の暖かさもあり、さっきより四季の舌を受け入れることができた。
「ん……ふ、ぅ……」
「ん……っむ、……」
 そのうち四季の舌に引っ張られるように、隼人の舌も四季の口内に導かれる。何がなんだかわからないまま続いていたが、この熱さはきっと良いことなんだろうと思う。口からはどちらのものかわからない唾液が溢れ、顎を伝ってシーツに落ち、染みを作っていく。
 お互いの舌が縺れ合って絡まったキスをしながら、四季はゆっくりと重心をかけていき、向き合って座っていた隼人の体をベッドに優しく押し倒す。正座をしていた足が崩れてしまって、そのまま足を立てた状態で仰向けになる。こんなにキスなんてしたことなかったからそろそろ苦しくはなっていたが、もっとこの感触を味わいたい。今の隼人には体制を整える余裕なんて残っていなかった。
「……っぷはぁ、っ!」
 四季が唇を離し、そのまま隼人の上に倒れ込む。お互い、肩で息をするほどにぜえぜえと疲労していた。以前歌劇ステージの仕事のために体力づくりで走り込みをした時もこんな感じになったな、なんてふと思い出す。しばらくそのままの体制で呼吸を整えていたが、準備の出来た四季は、少し体を起こして隼人に跨がる。
 「……上、脱がしてみてもいいっすか」
 そう問いかける四季のレンズ越しの翠色の目はいつもの様な輝きを持ちながらも、どこか大人びたように見える。これから四季と「モテたい」の先ある領域に踏み込んでしまうのかと思うと、心臓の鼓動が自分でも聞こえるくらいに響いてくる。
「う、うん……」
 覚悟を決めて頷くと、四季は、隼人のTシャツをゆっくりと捲っていく。インナーもつけずにいたのですぐに隼人の素肌が露わになる。袖までたくし上げたところで脱がせやすくするよう、隼人はバンザイの体制をとる。後輩に服を脱がされているというこのシチュエーション。いろいろなものが崩れていきそうになる恥ずかしさがあるが、どうせこれからそれ以上の恥態を四季の前で晒すことになるわけだし、隼人はあまり深く考えないことにした。あっという間に隼人のTシャツが剥かれ、上半身が露になる。四季は脱がせた隼人のTシャツをベッドの下の床にぽすり、と放り投げた。
 「あ……」
 上位にいた四季から小さく深く息を呑む音が聞こえ、露わになった上半身に涎がぽと、と落ちる感覚がした。ただ脱がせただけなのに、どうしてこう固まってしまったのだろう。
「……シキ? どうした?」
「いや、着替えの時にいつも見ているから、ハヤトっちの裸なんて慣れてるかなって思ったんすけど……すごい、良くて。」
「……そんなに違うの?」
「違うっす。昼間に見た時より、全然。」
 四季が、自分の上裸をとてもいいものを見るようなまなざしで見つめている――一体、どのように映っていたんだろう。どちらかいえば同年代の男子と比べてもそこまで立派な体をしているなんてお世辞にも言えないし、むしろ頼りない、と言えるくらいなのに。
「……触るっすね」
 そんな自分の素肌を、大切で愛おしいものを扱うように、四季の左手が撫でていく。顎から首に移動していき、デコルテから鎖骨を辿り、腋から、お腹のあたりに。
「ハヤトっち……きもちいっすか」
「なんか……くすぐったい……」
 素肌をこんなに触れられることは隼人にとっても経験のないことなので、どこかくすぐったい。どうかと言われれば、正直に言って「ただ触られているな」としか思えない。嘘でも、気持ちいいって言った方が良かったのか。でも初めてのセックスなんてきっとこんな感じだろう。四季だってきっと未体験だ。わからないまま、わからないなりに進んでいくのだろうか。
 いろいろなところを優しく撫でられていたが、四季の左手は、それまで触ることを避けていた隼人の薄い胸板に到達していた。先程涎が垂れたあたりからを、さわさわと撫でている。隼人の胸板は女性みたいに柔らかくないし、隼人自身が目標とするような立派な筋肉もついてない、ただ薄いだけの胸。それでも四季は何度も両手でやさしく触り、たまに力を入れて寄せるように揉んでくる。
(なんか、これだと揉まれているみたいで、ちょっと恥ずかし……っ!)
 その胸の頂の小さな突起に四季の指が触れると、あからさまに体を浮かせてわかりやすく反応した。四季にもきっと伝わっていることだろう。気持ちいいというよりは、何か敏感になった部分を触られているような違和感でしかなかったが。そのまま指で転がしたり、摘まんだりと、手を変え品を変え四季は隼人の胸の飾りに刺激を与えていく。
「ね、どうっすか? 乳首いじられて」
「わ……っかん、な……っ」
「……じゃ、これは?」
「え……わ、あ、っ!?」
 隼人の左胸に、四季が唇を寄せてくる。そのまま舌先で胸の突起をくすぐった後に、左の乳首が四季の口内に包まれた。
「あ……シキ、ちょ、っと! な、なめ……!」
 とっさに隼人は四季の頭を自身の胸から剥がそうとしたが、ヌルヌルとした温かな口内で敏感な突起を舐められる独特の感覚に戸惑い、うまいこと力が入らなかった。「気持ちいい」かはまだわからないが、四季の舌先でつつかれ、吸われるたびに背筋から痺れるようなゾクゾクした感覚がする。あり得ない、信じられないみたいな気持ち悪さも、だんだんその心地のいい痺れに置き換わっていくみたいだ。大好きな四季だから良い、ということなのか。
 そんなことを考えている隼人とはよそに、四季は隼人の胸の突起をぺちゃぺちゃと吸ったり、舌先でころころと転がしたりすることを交互に繰り返す。口に含んでいない方も指先で弄ったりと、胸への愛撫をしばらく続けていた。
 気が済んだのか、やがて四季は隼人の胸板から口を離す。唾液で濡れた隼人の胸の尖りは、ぴん、と両方とも硬くなっていた。
「わ……ハヤトっちのおちんちん、メガ熱いっすね」
 四季は上体を起こして隼人の脚の間にまた座り直し、寝間着代わりのジャージの上から、隼人の股間を優しく撫でる。最中にはそれほど感じなかったが、どうやら本能では快感を拾っているようだった。四季は、隼人の股間を服越しにすりすりと優しく撫でる。先程胸を愛撫されている時よりも気持ちはいい。ここをどうするか気持ちいいかがわかっているからだろうか。しばらく四季はそうしていたがやがて余裕もなくなってきたようで、隼人のジャージの裾のゴム部分に手をかけた。隼人は特に何も言わずに腰を少しだけ浮かせると、ゆっくりと下着ごとジャージを下ろした。途端にブルン、と音を立て、すっかり仕上がって天井を向いた隼人の性器が露わになる。
「ハヤトっちって、勃つとこんな感じなんすね、オレ以外の見るの、初めて」
「そりゃ、簡単にこんなの見せられるわけないだろ……っ」
 自分の局部を四季にまじまじと見られている。正直とても良いものではないし、早いところ終わって欲しい。隼人はもぞもぞと脚を動かして、中途半端にふとももに引っかかっていた下着とジャージをそのまま脱ぎ、つま先で蹴るようにしてベッドの下に追いやった。
 四季は、隼人の脚を大きく開いて、その間に向かい合うように脚を開いて座る。半勃ちになっている性器や後孔が四季から丸見えになっていると思うと、やっぱり恥ずかしい。
「こんなにガチガチになってんなら、一旦出した方がいいっすね……」
 相変わらず、どこでそんなことを覚えてきたんだろうか。右手で隼人の性器の根本に手をかけ、ゆっくりと擦る。
「んっ……! ぁ……や、っと、っち……!」
「ぁ……し、シキ……」
 ――シキが、俺のを触っている。目を瞑って、俺をイカせようとしている。
 自分でオナニーする時よりも勝手は違うが、それだけでもうすぐに隼人のモノは天井を向き、ちろちろと先走りが溢れてくる。
「シキ、もっと、さき、っ、さわ、って……!」
「んっ……こ、う……!?」
 嘆願すると、四季はすぐに竿の下から先端に右手を移動させ、ぬるぬると亀頭のあたりを刺激し始めた。敏感な場所なので、もうそこから快感が迫り上がってくるまでに、時間はいらなかった。だんだんと四季の手の動きが早まっていく。
「んっ……ハヤトっち、やっば……っ!」
「んあああ……、し、しき……い、いい……っ、ぁ! 〜〜〜〜〜っ!!!」
 そのまま四季の手によって、隼人は一度果ててしまった。

 射精直後特有のふわふわした心地がだんだんと収まり、一瞬ぼやけたがはっきりとしてくる。下腹部にかかった自身の精液が外気に触れて冷たくなった頃、隼人はやっと我に帰った。はあ、はあ、という息遣いが、自分のものなのに遠いものに聞こえていた。
 目の前に座っている四季は隼人の脚を抱えて、これからの行うことへの準備を進めていた。
 「シキ……今更だけど、俺だけ裸で恥ずかしい……」
 生まれたままの姿の隼人とは対照的に、四季は服を着たままだった。あ、と失敗に気づくような表情をした後に、一旦抱えていた隼人の脚を降ろし、あわててジャージだけを下ろす。それ以上脱がなかったのは少しずるいと隼人は思ったが、それほど余裕はなかったんだろう。ピンクのTシャツと派手パンという出で立ちも、なかなかに面白いが。その派手パンの中心が盛り上がっていることに、薄暗い中で隼人は気づいた。
「今更だけど、シキって俺で勃ったの……?」
「何言ってるんすか! メガ余裕なくて正直、ヤバいっす……」
 恋人や憧れとした存在に、そんな感情を抱いてしまうことになった四季のことを考える。
「、……本当に、いいんすよね?」
 眩しくて、憧れて、恋焦がれたそんな存在。それを今から自身の手で、奥まで暴いてあられもない姿にしてしまおうとするのだ。
「うん……いいよ」
 今まで誰にも触られたことのない秘部に、四季の指が充てられているのがわかる。もうここまで来たら戻れないかもしれないが、彼と進み道なら、もう怖くないとも思えていたが、不安で四季の手元は見られなかった。
「ハヤトっち、ちょーっと力抜いてほしいっす……」
「う、うん……ひゃっ!」
 てっきり宛がわれた四季の指がそのまま入ってくるかと思ったら、何かとろり、とした感触を秘部に感じ、思わず悲鳴を上げてしまう。
「あ、ローション、やっぱり冷たかったっすか?」
 四季の方に視線を向けると、サイドボードに置いてあったはずのローションのボトルを開け、そのまま隼人の股間に中身の液体を垂らしていた。
「う、うん……! びっくりした……」
 常温で置いてあったものの、やっぱり素肌に触れると温度差のせいか冷たさはある。
「これから痛くないようにするためだから、冷たくてもちょっと我慢してほしいっす」
 気遣うような四季の一言に頷く。
 四季の指がローションの感触を纏って秘部に触れる。その感覚に隼人は身構えていたが、すぐに窄まりの中に侵入してくる。ぬるついた感触と、温かい中に自分とは違う熱を持ったものが入ってくる、そんな心地だった。
「ど、どうっすか……?」
「なん……っか、へ、ん……」
 痛みはあまり感じない。今まさにローションを継ぎ足しながら、ゆっくりと後孔に塗り込めるように指を埋めているからだろう。それでも自分ではない何かが入っているという違和感が消えず、どこか知らない部分を触られてる、むずむずした感じがある。
「ローションも使っているから、もう少し、いけそうっすね……?」
「う、うん……もっと来て、シキ」
 窄まりに、ローションがさらにかけられる。少し冷たいが、痛くなくなるのならこの冷たさなんてまだマシだ。冷たさが和らいだところで、もう1本の指も入ってくる。
「ん、っ……!」
 流石に、1本よりも少し痛い。後孔からとろりと温かいものが流れてきた。やや気味悪さにぎょっとしたが、中に入ったローションが溢れたからだと、グググ、と中に埋まる感覚で隼人は理解できた。しばらくして2本目も同じくらいに埋まったようで、四季はそのまま動かすのをやめた。ゆっくりと隼人の体内に馴染むまで、待ってくれているんだろう。そろそろ馴染んだ頃を見て、さらに3本目の指が縁に充てられ、隼人のナカに入ってくる。
「――ん、゙ん゙っ!!」
 流石に、苦悶の声を上げてしまった。ローションも相変わらず秘部にたっぷりとかけられているが、慣れなくて痛い。隼人の頬をつう、と涙が流れてくる。泣いたら四季に心配をかけてしまう、と思ってはいたが止まらない。未知の痛みに対する生理的なものなのだろう。
「……ハヤトっち、大丈夫っすか? 無理そうなら、やめ――」
「いいよ、続けて……っ」
 入口で入れたところで慌てて指を止めた四季。泣いてしまったのを見て、そのまま止めようとしたんだろう。でも、ここでやめたくはない――痛みの中で、隼人はそう、四季に訴えていた。そうしたら、シキは満足できないまま今日を無駄にしてしまうだろう。
「い、いやでも、苦しそうだし……」
「ここで……や、めたら……っ、シキが、嫌だろ……っ!」
「お、オレは別に……」
「俺が、嫌なんだ……! シキだけ、放っておく、のっ……!」
 隼人は下腹部から臀部に感じる違和感に耐えながらもなんとか両目を開き、脚の間から見える四季の顔を見ながらそう伝えた。2本目の指を挿入してからさらに萎んでしまった隼人のそれとは正反対に、四季の屹立は依然と勃起したままだ。
(――どうするかはわからないけど、いちかばちかだ)
「――んっ、あ゛っ!」
 隼人は四季の左手を掴み、ぐい、と3本の指を押し込む様にする。力はうまく入らないし、隼人の目線からはどうなっているかはわからないし、痛いのは変わらない。ミチ、と入り口の周りが拡げられる様に感じた。
「ハヤトっち、そんな、無理、しなくて」
「いい……大丈夫、だって……! ゆび……うごかして、いい、から……っ!」
「……わ、かった……!」
 隼人によって押し込められた3本指を、四季はゆっくりと抜き差しするように動かす。ちゅ、と動かすたびに遠くからローションの湿った水音が聞こえている。自分の臀部から聞こえていると思うと、隼人は少し信じられないような心地にもなっていた。
「確か……入口から近いとこに……いいところが……」
「な、にそれ……ひゃあ。っ!?」
 慣れないような言葉をつぶやきながら埋められた指を動かす四季に疑問を覚えながらを見守っていると、急に背筋をびりびりとした感覚が駆け巡る。
 四季の指が、隼人の内壁の入口から少し入ったところを掠めた時だった。先ほど胸を責められた時と似た、いやそれ以上に強い感覚が、下腹部から上ってくるような心地を覚えた。思わず高くて大きな悲鳴が自分から発せられたことにも驚く。
「ぁ……シキ、これ……や、あ゙ん゙ん゙っ゙!!」
「ココっすね、ハヤトっちの気持ちいーとこ」
 「あっあっ、……っ、や、そこ……っ、へ、ん……っ!」
 指を出し入れしたり、先ほど探し当てられてた「気持ちいーとこ」を3本の指で、ふにふにとその部分を交互に刺激される。先程3本目を入れた際に隼人の性器は痛みで萎んでしまったが、四季の手によってナカを愛撫され続けた結果、また先程みたいに大きく勃ち上っていた。
「ハヤトっち……やば、っ」
「し、シキ……ぃ、っ、そこばっか、ぁ!」
 だんだんと四季の指が激しくなる。素早く指を出し入れし、今までより早いスピードで隼人のナカの気持ちいいところを刺激していく。
「反応、よ、すぎる、っ……!」
「やっ、あ、っ、あっん~lっ!!」
 隼人がひときわ大きく喘いだ後に、ちゅぽん、という音と同時に、中に埋められた指が抜けていく感触を覚えた。
 指を抜いて体勢を整えた四季は、派手な総柄のピンク色のパンツから自身の性器を取り出した。隼人のモノよりも少しだけ大きく見え、もう挿れてしまうと出してしまいそうと言わんばかりに、反り立っていた。サイドボードに置いていたピンク色の小箱からコンドームの包みを1枚取り出し、性急に封を開け、勃ち上がったそれに被せていく。余裕のない表情だったし、装着するのにもややモタついていたのであまり慣れていなさそうだった。
「ちゃんと、付けた?」
 ちょっと心配そうになって、隼人は余裕のなさそうな四季に声をかけていた。
「う、多分……これで、大丈夫」
 薄暗いが、四季のモノは先ほどパンツから取り出された時に見たものよりも濃いピンク色になっている。コンドームについた潤滑剤のせいか、わずかな照明の光に当たってぬらぬらと見えるのがまた、いやらしい。
 四季は、隼人の脚を開いてその間に近づいて座る。隼人の窄まりに、四季の亀頭が当たる。潤滑剤と塗りこめられたローションが擦れたいやらしい水音で、隼人の心臓は大きくはねた。ごくり、と固唾を飲む音が隼人にも伝わってくる。同じくらい緊張しているのだろう。
「ハヤトっち――痛かったら、オレのことだけ考えてて」
 そう、優しげにあやすように四季が言うと、亀頭が穴の中へと挿入っていく。押し上げられるように、熱くて熱の持ったものが入ってくる。
「あ゙っ゙、ぁ゙……!」
 やっと入った指3本でもきつかったから、それより太く勃起したものだと、当然にもっときつい。今の自分はどんな顔をしているのかは隼人もよくわかっていなかったが、あまりにも苦しそうなのだろう。狭い部分を無理やりこじ開けられるような圧迫感。生理的な涙が頬をつたう感覚。それほどにここには男根を受け入れるために出来ているものではない、と身を持って知ることになるとは。
「ハヤトっち、大丈夫、っすか……?」
「うっ……ん、あ゙っ! だ、いじょ……もっ、と、いれ……っ」
 挿入ったところから体が裂けそうになるくらい痛い、けど。
(――オレのことだけ、考えてて)
 先程言われた言葉を思い出して、四季の事だけを頭に思い浮かべる。
 四季によって、気持ちよくされている。そう、考えるだけでどこか安心感があった。
 「シキ……キス、して」
 キスを強請ったのは無意識だった。未知の世界に誘ってくれるのも、それに伴う苦しみをやわらげてくれるのも、四季がいい。
「ん゙ん゙っ゙ぁ……っ!!」
「奥、入れるの……つらそう……だから、ここまで……っ……」
「ぅ……」
 ここまで、と言ったが、根元まではすべて入っていないと思う。それでも入り口付近の痛みはまだ相変わらずだった。しばらく隼人の呼吸が整うまでは、四季は中に埋めて動かさないまま、じっとしていた。はあはあ、と息をする四季は、どこか動物的にも見える。
 やがて、お互いの呼吸がやっと落ち着いてきた頃に、四季が口を開いた。
「ハヤトっち……動かしてみても、いい?」
「ん……、っん……!」
 隼人がこく、と頷くと、四季のモノがずる、と音を立てて抜けていく。体の内側にあるもの全てが無理やり押し上げられる感覚に、ゾクッ、としたものを覚える。そのままゆっくりと出し入れを繰り返して動かしていく。先程たっぷりと後孔に塗りこめられたローションが、挿入時の摩擦でぬるぬるとしている感覚でなんとかなっている。
 そのまま腰を動かし隼人の内壁をこすりながら、四季は隼人の自身に手をかけた。指を入れた時に勃ち上っていたそれは、挿入時の痛みが強かったせいか芯を失ってへたりこんでしまっていたが、潤滑剤や先ほど隼人が出した先走りや精が付いた手で優しく扱きあげると、いつのまにかゆるく勃ち上がるほどにもなっていた。
「ふぁ、し、き……! そ、れはああっ、あっ、やっ!!」
「さっきまで怖くて萎んでたのに……っ、すぐまた復活するなんて、元気、っすね……!」
「ふぁ、あっ!あっあっ、いぃ……っ!」
「シキ、シキ……っ! あっ、やっあっ、ぃ、いい……っ!」
「ハヤト、っちぃ……! やば、あっ!」
「あ、や、で、でるっ……!」
 いたい、あつい、きもちいい、とけちゃいそう。
 もう、シキのことだけしか、考えられない。
 自身を扱く四季のリズムも速くなり、早く先走りも溢れてきている。その後ろではぬぷ、ぬぷ、とリズミカルに腰をグラインドさせている。またさっきのように肩で息をしながら、良いとこを先端で擦ったり、思った以上にゆったりとしたペースだが、四季のその拙いピストン運動が、逆に心地よく思えてきた。四季も結局、自分と同じように経験があまりないのだ。
「んっ、あっ……! オレ、も……いきそう……っ……!」
「ふぁ、あっ、やっ、ん、〜〜〜〜〜っ!!」
 四季の性器の先端が、ナカのいいところにグっと当たる。そのまま隼人は、四季の手であっけなく絶頂へと導かれてしまった。きゅう、と埋まった四季のモノを急激に締めつけた感覚。その瞬間に締めつけたモノがドクン、ドクンと大きく熱を叩きつけて脈動するような感覚を覚えて、隼人はそのまま意識を手放した。
 
 * * *
 
 (う……、お尻がまだ変な感じだし、全身べとべとする……)
 隼人が目覚めた時は、窓の外はまだ暗くて太陽も登っていないような時間だった。汗や体液、ローションなどがあちこちに纏わりつくような不快感。そして何よりもう四季の自身がまだナカに埋め込まれているような、強烈な違和感。初めてなので何もわからないが、これは事後特有のものだと思いたい。
(明日には直るかな、これ……)
 体を動かすことも億劫に感じる倦怠感の中でなんとか首を動かして隣を見ると、Tシャツだけを身につけたまま軽く寝息を立てて眠っていた。まだナカに入ってるような感覚がするので少し不思議に見える。ブランケットはかけられていたが、体力のあまりない四季のことだ。ナカから抜いた後はそのまま寝てしまったんだろう。
 正直に言って、初めてのセックスは気持ちはよかったが、同時に痛みも強く残っていた。それでも今は嫌な気持ちではないし、また四季とひとつになりたいと思えてしまうのは何故だろう。
「ん……ハヤトっち……」
 四季の寝姿に見惚れていると、背を向ける四季から、隼人の名前をつぶやく声が聞こえた。寝言なのか、起きていることに気づいているのかはまだわからない。
「シキ、まだ寝てていいよ」
「んん……」
 寝てていい、と言う言葉に甘えているのか、四季は隼人に背中を向けたままでいた。
「……なんか、ごめんなさいっす」
 寝言なのか、独り言なのか、はたまた隼人にはっきりと話しているかもわからない。小声で、後悔と少し泣きそうな調子だった。調子にのってやりすぎて反省している四季はこんな調子だが、それよりも深刻なものがのしかかっているように、隼人には聞こえた。
「いや、なんでシキが謝るんだよ」
 独り言だとごめん、そう思いながら、隼人は四季に話しかけるように壁に向かってつぶやく。今の四季は隼人に顔を見られたくないようだったから、隼人は寝相を変えずそのままにして。
「……正直、ハヤトっちとヤりたいって、前から思ってて……もしかして都合よく利用しちゃったのかもなって、ハヤトっちがイった後に、少し思っちゃって……」
「……気にしてないよ。俺も、いずれはシキとこういうことをする日が来ると思ってたし」
「ハヤトっち…………」
 四季は下心を持っていたのかもしれないが、隼人には気にならなかった。何より隼人も「お付き合い」の中でいつかこういう展開が来るのではないかと期待しなかったわけではない。
 相変わらず背中を向けてしまった四季の後頭部に手を置き、そのまま黒髪に指を通してやさしく撫でる。
「シキ……この前の続きなんだけどさ」
 以前、2人で語り合った会話の続きを、四季の髪を触りながら続ける。
「俺の思うモテたいって、ただ特定の誰かと付き合うためだとか……そういう意味じゃないと思うんだ」
 隣の四季は、相変わらず背を向けたまま返事もしないが、少しだけ首を傾けたのが分かった。
「俺の場合だと、男子でも女子でも、誰かの大切になりたいとか、憧れの存在になりたい……って意味かもしれない」
 それを聞いた四季は、先ほどまでのしおれた様子はどこへやら。隼人の方向に寝転がり近づいた。
「ハヤトっちならそう言うと思ってたっすよ、オレ……!」
 隼人の「モテたい」にはインモラルな意味は含まれておらず、誰かにとっての憧れや尊敬の対象になりたいといった、純粋で穢れのないものだ。そんなの、もう結構長くなってきた付き合いの中でわかることだし、いちいちこんなことをしなくても確認するまでもなかったことなのに。
「モテについてはこれからも研究するし、ファンの皆にも――もちろん、シキにもかっこいいって思わせられるように頑張る!」
 これからも「モテたい」ということについて悩むこともあるが、こうしてひとつの一応の答えが出たことは、隼人の中でもしばらく考えていたもやもやに、一応の結論が出たようにも思えた。
「オレ、今度は最後まで出来るようにするっす」
「え、でもさっき入れるとこまで、しただろ……?!」
「……結構キツかったし、不完全燃焼なんすよね。後ろいじるのに慣れてきたら、奥まで入るらしいっすよ?」
「え!? あれ以上……入るの?」
「慣れてきたら、の話っすよ。奥まで入るとハイパー気持ちいいらしいっす」
「そ、そうなんだ……」
「ハヤトっちも気になるっすか?」
 浅い場所にある「いいところ」を突かれ、前を扱かれるだけでもうおかしくなりそうな位だった。あれ以上の深度に四季が入ってしまったら、一体どうなってしまうのか。
「気になるけど……また後でも、いいかな」
 早いところ体についたべたべたした不快感を流したい気持ちもあったが、今の隼人はもう少し四季と触れ合っていたかった。四季と目線をあわせ、額をすりあわせるように重ね、また四季のベッドに沈んでいった。

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